byul&GT

パクリルアーは悪か【コラム】

2026-06-25

※以下、特許や意匠をまとめて「特許など」と表現します。

パクリルアーは悪とかモラルとか倫理とかいうのは少々野蛮だと思う

 まず知的財産戦略において、自分が考えた技術やアイデアをパクられたくなかったら公開せず秘匿にするか、特許などを取って保護するかしかありません。当然商品化して販売したいのなら世間に公開することになります、その際パクられるのが嫌なら特許などを取って保護しなければいけないのが社会のルールです。
 特許などを取らずに世間に公開するということは、本人が意図するかどうかに関わらず、どうぞご自由にアイデアを使用してくださいと認めている状態になります。それが人類共通の財産となりそれで人類は発展してきました。
 それにも関わらず、発売してから何年も経ったルアーによく似たルアーに対して「恥ずかしくないのか」だの「モラル」だのと言ったり、他企業の善良な一般人に対して攻撃したりするのは虫のいい話で、そういった方は特許切れになった技術も永遠に使ってはいけないと言うつもりなのでしょうか。
 もちろん社会のルールや法律の方が間違っているというような議論もありますが、それであればそっち系の話を展開していけばいいのであって、現在の法律を犯していない、一企業のルアー製造部に勤める善良な一般市民に対してパクリだのなんだのと揶揄することは私は野蛮なことのように感じます。

特許などがなくても3年間はパクれない

 では特許などで保護されていない商品はパクり放題なのかといえばそうではありません。不正競争防止法によって販売から3年間は保護されます。これは、模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少してしまうので公平ではないという理由からできた決まりです。
 よく「開発費や時間をかけて商品を作ったのにパクられたら無駄になってしまう」というようなことを言う方がいますがまさにそうで、ただしそれが3年なのです。永遠に保護されるなんてことはありません。3年の間で開発費などを回収してねということなのでしょう。
 もちろん期間が短すぎるという議論があってもいいのですが、それはその議論を深めていけばいいのであって、自分の倫理観をもって罪を犯していない他人を揶揄することが私はいいことだとは思いません。

特許をとってもパクリまくられた例があるが、それはさすがにかわいそう

 株式会社タックルハウスが発明した重心移動システムという革命中の革命です。これは特許を取ったのにも関わらず、なんとかあの手この手でかいくぐって製作された重心移動システムを搭載したルアーがうじゃうじゃ出てきました。
 リールなどの誰でも作れるわけではないものをめぐっての大企業どうしの戦いならばどんどんやればいいのですが、参考→シマノとダイワ仁義なき戦い【マグシールド編】実は磁性流体はシマノが先だった、大企業でもないルアーメーカーが膨大な時間と労力とお金をかけて全てをいちいち訴えることなど不可能です。
 こういった例は、理不尽で悔しい思いをしたであろうことは想像に難くないです。また、パクリルアーがちゃんと性能や安全を確保してくれているのかも不安になったことだろうと思います。

参考資料で解説、『逐条解説 不正競争防止法』by経済産業省

 法律の条文を読み込むのは素人にはほぼ不可能です、そういう場合は政府の○○省の資料が非常に便利です。

他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為

下が不正競争防止法の条文です。

不正競争防止法
(定義)
第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。 三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

(差止請求権)
第三条 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

(損害賠償)
第四条 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密又は限定提供データを使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。

 要するに他人の作ったものの形態をパクったらいけませんよ、もしパクられたら最初に作った人は差止請求と損害賠償の請求をすることができますよということです。
 この条文の趣旨を経済産業省が下記のようにとても分かりやすく解説してくれています。

商品ライフサイクルの短縮化、流通機構の発達、複写・複製技術の発展を背景として、他人が市場において商品化するために資金・労力を投下した成果の模倣が極めて容易に行い得る事態が生じている。このような模倣品・海賊版を放置すると、模倣者は商品化のためのコストやリスクを大幅に軽減することができる一方で、先行者の市場先行のメリットは著しく減少し、模倣者と先行者との間に競争上著しい不公正が生じ、個性的な商品開発、市場開拓への意欲が阻害されることになり、公正な競業秩序を崩壊させることにもなりかねない。 こうした点を踏まえれば、個別の知的財産権の有無にかかわらず、他人が商品化のために資金・労力を投下した成果を、他に選択肢があるにもかかわらずことさら完全に模倣して、何らの改変を加えることなく自らの商品として市場に提供し、その他人と競争する行為は、競争上、不正な行為として位置付けられる必要があった。

引用元:『逐条解説 不正競争防止法』経済産業省

 要するに誰かが開発費をかけて作ったものにただ乗りするのは不公平だよねということです。

不正競争防止法で保護されるのは3年

 まず法律を載せておきます。

不正競争防止法
(適用除外等)
第十九条 第三条から第十五条まで、第二十一条及び第二十二条の規定は、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為については、適用しない。

六 第二条第一項第三号に掲げる不正競争 次のいずれかに掲げる行為
イ 日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品について、その商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

 要するに販売された日から3年経った物にはさっきの条文(第二条)は適用しないという事なので、保護されるのは3年ということです。そのあとはパクってもいいよということです。
 ただしルアーの模様まで丸パクリするのは著作権の問題が出てくる可能性が出てくる場合があります(工業製品の模様が著作物として認められる条件はかなり厳しいですが)。

モラルとしてはどうか

 法律や社会の仕組みを知った上で、自分は法律や社会の仕組みに賛同できないという意見を持つのは自由ですが、何も考えずに感情だけで何の罪も犯していない人を批判しているところを見ると本当に吐き気がします。
 私の意見を申し上げると、現在の不正競争防止法でいいのではないかということです。3年という期間も妥当で、それ以上保護すると逆に不公平なのではないかと思います。特許をとれるようなすごい発明をしたら特許をとって保護するしかないと思います。

ダイソーとコアマン騒動

 一時期コアマンという会社のVJというルアーのパクリルアーをダイソーが出したという話題が盛り上がったことがありました。その騒動を例にとって解説します。

ダイソーにモラルはあるか

 まずダイソーは法律を守っているのでしょうか、コアマンVJが発売されたのは確か2015年頃で、ダイソーが発売したのが2021年頃なので、ダイソーはなんら法律を犯していません。そして一目でコアマンVJではないのが分かるデザインで製造されています。
 私の意見になりますが、その点では実にモラルのある企業だと感じます。
 ただし、ルアーの話ではなく日本経済にとって、こういった中国製造激安販売のビジネスモデルの大企業がいいことなのかどうかは疑問の余地があると思います。

コアマンVJは特許や意匠登録はしているか

特許→ない
意匠登録→ない
商標登録→立体商標の登録あり、ただしルアーの表面にロゴ入り

特許

 特許はとっていないです。

意匠登録

 コアマンVJは意匠登録もないです。意匠登録とは物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を保護する制度です。要するにデザインの保護ですね。

商標

 コアマンVJは立体商標として登録されています。知財には特許や意匠の他に商標と言うのがあります。商標とは企業のロゴや名前のことで、2次元の物だけでなく立体商標というのもあります。
 立体商標として登録されると、ダイワやシマノのロゴを使ったものを販売したらいけないのと同じように、消費者が混同するような形の商品を販売する等の行為は禁止されます。
 そしたら、コアマンVJのパクリ品はアウトではないかということになりますが、これもアウトにはならないんです。コアマンVJの場合、図1のようにロゴが入っているルアーが登録されているのでロゴまでパクらなければ大丈夫なんです。
 形状だけで商標登録をするのは不可能に近いくらい難しく、コーラの瓶やヤクルト級でなければ無理です。なのでロゴも含めた形で登録したのでしょう。何の効果を狙って商標登録をしたのかは不明ですが。
 なお、上でも書きましたが模様まで丸パクリをすると著作権の問題が出てくる場合があります。

図1

中華ルアーは論外

 当然中華ルアーは法律を守りませんので論外です、話になりません。しかし取り締まりのしようがないのが現状です。
 また品質の面からおすすめしません。私も中国から直接プラグを数種類買ったことがあるのですが、本当にゴミでした。真っすぐ浮かない、ラトルが鳴らない、見ただけで品質がゴミ等、10個中10個がゴミでした。そもそもどんな強度のプラスチックを使っているのか分からず、強度が非常に心配です。心からおすすめしません。

 

Posted by UL&GT