魚について知ろう魚の感覚
魚について知ろう魚の感覚
ここでは視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、側線感覚を分かりやすくかつ正確性をきして書きました。なお、魚も人も感覚は五感だけではありませんが、便宜上そう言われています。
視覚
ヒトも魚も目の構造は同じです、レンズがあり網膜があり色を感じるための細胞もあります。構造は同じでレンズの性能もいいのですが魚はヒトよりも網膜の細胞の密度が粗いという理由で解像度が低く視力が低いのです、一方、魚は色を識別する視細胞を4種類持っているのに対し、人は3種類しか持っていません。さらに紫外線を見ることができる種が多くいることも分かっていて、色覚は魚の方がヒトよりも優れていると考えている学者が現在では主流です。
視力
魚の視力はマダイで0.16、ブルーギルで0.09、ブラックバスで0.16~0.17、スズキで0.12、カツオ・マグロ・カジキなどで0.28~0.56と言われています。魚の目はレンズの能力は正確なのですが網膜の視細胞密度が低いので視力が低いのです。
人間で目の悪い人はレンズの調節機能が低下して網膜の前で見ている物が結像してしまうので物が見えにくくなってしまいます、これが人間の近視との違いです。ですので細かいことを言えば魚は目が悪いが近視ではないということになります。
色覚
多くの魚には色覚があり、特に光が届く深さに生息している魚には色覚がある種が多いです。魚類の多くは赤色付近の波長の光を識別できませんが、淡水魚には赤い波長を識別できる種が多く見つかっています。これは水は赤の波長の光を吸収しますので、赤色は水深が浅いところまでしか届かないからではないかという説があります、反対に一番深いところまで届く光は青から緑の波長の光です。
深いところを狙うマダイのルアー釣りで、緑色のルアーがよく釣れるというのはあながち間違いではないかもしれません、反対に赤いルアーを使ったところで水深15メートルも沈めると黒っぽい色にしか見えていないということになります(混じりけのない赤色の場合)ので色に訴える効果はありません。
魚には釣り糸が見えているか
釣糸は光を反射しますのでどんなに細くしたところで魚からは見えています。色などを工夫して光の反射を抑えて見えにくくしたという商品はありますが、見えなくなるということはありません。
もし、全く光を反射も屈折もしないか、魚が認識できない波長の光以外は一切反射しない、かつものすごく細い釣り糸が発明されれば、魚からは見えないということになるかもしれませんが不可能でしょう。
また、釣り糸が見えるか見えないかで釣果に影響があるかどうかは分かっていません。水産学博士の川村軍蔵さんは著書『魚の行動習性を利用する釣り入門』の中で色々な実験結果を述べるとともに「単なる思い込みなのではなかろうか」と懐疑的な立場を表明していますが、私も全くその通りだと思います。
釣れる時は釣れるので気楽にやったほうが釣れたりします。
聴覚
魚の耳は人のように耳たぶや耳の穴といった外耳がないので外からは見えません、さらに鼓膜もありません。頭蓋の中に左右一対の内耳があり、その中の耳石と有毛細胞からなる感覚器官で音を感じます。また、人と同様に耳では聴覚だけでなく平衡感覚も得ています。
遠くの音は浮袋で受け取って耳に伝えるという仕組みで聞いているので、浮袋のない魚は遠くの音は聞こえていないと言われています。特に骨鰾魚と呼ばれる種類は浮袋と内耳がウェーバー小骨で連結されているので耳がいいと言われています。この仕組みは鼓膜で受け取った音波を骨を介して内耳に伝えるという我々の耳の仕組みにとても似ていますね
水は密度が高く音は水中では空中に比べ4~5倍の速さで伝わり散乱しにくく遠くまで伝わります、魚にとって聴覚は捕食者の存在や餌を探す手がかりとして重要な感覚になります。
音圧と水粒子の運動
空気中で生きている私たちにとって、音波は一つの物理量でできていると思ってしまうのはしかたありませんが、実は音波は「粒子運動」と「音圧」の2つで構成されています。 魚はこの2種類両方を聞いているのですが、私たちが鼓膜を使って陸上で聞いている音と言えば音圧の1種類だけです。
何かが振動すれば陸上なら空気の粒子が、水中なら水の粒子が動き、そこに圧力の疎密が生まれそれが次々と伝わって遠くまで届く、それが音波です。我々が聞いているのは圧力の疎密でできた「音圧」であり、魚が聞いているのは「粒子運動」です、水中なので水粒子の運動とここでは言うことにします。
粒子運動は空気中ではすぐに減衰して無くなりますので我々の耳に届くのは音圧だけということになるのですが、水中では周波数により数センチから数十センチは伝わります。魚はこの水粒子の運動だけをダイレクトに検知することができます。それでは魚は人間のように遠くで鳴った音、つまり音圧を聞くということができないのかということなのですが、上記で言ったように魚は浮袋で音圧を受け取り粒子の運動に変換して内耳に伝えるという間接的な方法により音圧を聞いているのです。
側線で音は聞けない
確かに水粒子の運動は側線でも耳でも検知します。しかし、耳で聞くというのは聴覚で、側線で感じるのは側線感覚です、これらは全く別物です。耳と側線で検知した水粒子の運動はそれぞれ別の脳の部位に送られます。
例えば、同じ粒子運動を感じても聴覚が刺激されれば逃避行動が起きたが、側線感覚を刺激しただけでは逃避行動は起きなかったという実験などがあります。側線感覚と聴覚では役割も生体反応も違うのです。全く別の感覚器ととらえなければいけません。ただ我々には側線がないので全く想像もつかない感覚なので混乱してしまうのは無理もありませんね、聴覚には聞くという動詞があるのですが、側線感覚は側線感覚というしかありません。
側線で音を聞いているというようなニュアンスで書かれているブログの記事などが多いですが、誤りですので注意してください。
聴力
聴力はどれだけ小さな音が聞こえるかということで計り、それを聴覚閾値といいdb(デジベル)で表します、数値が低いほど耳がいいということになります。水中と空中では特性や単位が違うので直接比較するということはできないのですが、耳のいい魚で60db~80db、人が水中に入って単位を合わせた値が60dbと言われていますので、ヒトと魚類では同じような範囲に収まると考えてもよさそうです。
しかし、同じ耳でも、最初に述べたように水中では音が伝わりやすく遠くまで音が届くという事には留意しなければなりません。
可聴周波数
音の高さは周波数(Hz)で表します、数値が高いほうが高い音です。ヒトが聞くことのできる音の高さの範囲は20Hz~20000Hzで、魚類は1000Hz以下に可聴域を持つ種が多く、ナマズの一種では最大5000Hzまで聞こえる種がいることが確認されています。ちなみに、ヨーロッパスズキは300Hzが一番感度がいいことが分かっています。金魚は凄くて200Hz~4000Hzで感度が高い領域が500Hzあたりだと言われています。このような値から、可聴周波数はヒトの方が優れていると言えます。
ラトルの音は聞こえているか
例えばスズキと極近い種であるヨーロッパスズキは300Hzが感度が高いと言いましたが、300Hzは少し高めのヴイーンという音ですのでコトコトカラカラという一般的なラトル音は聞こえません。聞こえないので効果ゼロです。低い音が出るようなラトルを開発して測定して販売されているルアーがあれば聞こえているでしょう。
嗅覚
よく見ると魚の鼻は左右に二つずつ穴が開いています、この穴は前後に並んでいて前の穴から水が入って後ろの穴に抜けていきます、その際に鼻の穴の中にある嗅房という感覚器に水に溶けている匂いの分子(主にアミノ酸)が触れて匂いを検知するという仕組みになっています。
嗅覚は魚が餌を見つけるための重要な感覚です。餌の匂いを嗅ぐと脳から餌を探すように指令が出ます、これを索餌行動と言うのですが、魚が撒き餌に寄って来たり真っ暗な夜の海で魚が釣れたりするのはこのためです。
また、このことからもアミノ酸は魚の摂餌行動において極めて重要な物質ということになります。
凄まじい魚の嗅覚の感度
魚の嗅覚は凄まじい高感度で、血の一滴を嗅ぎつけてサメが寄って来たりサケが匂いを頼りに故郷の川に戻ってくるなどはよく知られています。具体的な数値で言うと、100万リットルの水に味の素1.69gが溶けていればそれを感知してしまうという実験結果があるくらいで、これは感覚的に言えば学校の25mプールに小さじ半分という凄まじさです。参考→さかなの不思議発見
ヒトの嗅覚と魚の嗅覚はどちらが鋭いか
よく釣りのブログなどで魚の嗅覚はヒトの数千倍から数万倍あるというような言説をが見受けられますがこれには根拠がありません、人と魚では匂いを感じるメカニズムが違うので比べようがないのです。
まずヒトでは空気中に放たれた揮発性の化学物質を鼻の中にある嗅細胞で感知します、砂糖や塩に匂いがないのはそれらが揮発性ではないからです。いっぽう魚類では主に水の中に溶けた匂い分子であるアミノ酸をヒトと同じく鼻の中にある嗅細胞で感知します。魚類は空気中の匂い感じることができませんし、同様にヒトは水中の匂いを感じることはできません。また、水中に溶けたアミノ酸をヒトは匂いではなく味として感知します。ですのでどちらが鼻がいいかということは比べようがないのです。
では何とかして何となくでも比べられないかということでいろいろな論文や実験を当たってみたのですが、その中で、水中に味の素を溶かして魚の嗅覚と人の味覚のどちらが低濃度で感じることができるかという実験をみつけました。それによると人は水1リットルに1.69gの味の素が溶けていればぎりぎり味として感じられ、魚の場合はわずか1.69μg~16.9μg(μg=マイクログラム)溶けていれば匂いとして感じることができたということです。マイクログラムとは100万分の1グラムですので、つまり魚類の匂いの感度はヒトの味覚の感度の10万倍から100万倍鋭いということです。もう一つはジオスミンというカビ臭さや泥臭さの原因になる物質があるのですが、これはヒトにも魚にも匂いとして感じることができ、ニジマスとティラピアはジオスミンに対する嗅覚感度がヒトの1000倍あると言われています。
これらの実験からもいかに魚類の嗅覚が鋭いかが分かります。
味覚
魚は味覚も鋭く、魚の中でも特に鋭いゴンズイはヒトの100万倍と言われています。魚が感じることができる味物質は数種類判明していて特に嗅覚と同様アミノ酸に対する感度がもっとも鋭いということが分かっています。
魚は水に溶けた同じ物質(主にアミノ酸)を嗅覚でも味覚でも感じるということになるのですが、それぞれの感覚器で検知した刺激は脳の別の部位に送られますので、それぞれが違う行動を引き起こすための刺激となります。
味覚の役割
匂いを手掛かりに餌を見つけた魚は、最終的にその餌を飲み込むかどうか判断する必要があります、その役割を味覚が負っています。
魚は口の中以外にも唇やひげなどに味蕾があり、物を口に入れる前にそれが餌であるかどうかを判断できます。口に入れていいかどうかをまず判断し、口に入れた後にも飲み込むかどうかの判断をするのです。
ちなみにものすごく味覚は発達しているナマズやゴンズイは嗅覚に頼らずに味覚だけで餌を探すことができることが分かっています。
万能餌はないのだがオキアミはものすごく万能
味覚研究の発達により特定の魚種が特定のアミノ酸や味物質を好むということが分かっています。さらに同じ魚種でも環境や住む場所によって餌の好みも違いますので残念ながら完璧な万能餌というものは存在しません。
実際にすべての釣りの種類にそれぞれ専用の餌が使われています。エビで鯛を釣るというのは有名な話です。私の経験では、沖縄での五目釣りの餌はサンマの切り身に勝るものがないと感じています。
しかし多くの魚に効果が高い化合物が分かっていて、餌の中のスター選手である、オキアミ、ゴカイ、ミミズに共通して含まれるジメチルプロピオテチンという有機化合物です、これはに摂餌促進効果があり養殖の餌にも添加されたりします。
釣り餌メーカーはそれらの研究をもとに日々理想の餌を開発しているのです。
触覚とその他の皮膚感覚
触覚とは皮膚感覚の一種であり皮膚感覚には他に、痛覚・圧覚・温度覚があります。なお、触覚と側線感覚は別物です。
触覚
触覚とは狭義では皮膚に与えられた機械的刺激を検知する感覚です。魚類にも触覚があり体に刺激が加わると素早く逃避行動が行われます。
また、アミウツボが餌に噛みついて、それを食べるかどうかを判断するときに触覚を頼りにするという研究結果がありますが、ブラックバスが匂いも味もないワームに食いついてもすぐに離さないのはワームの柔らかさにあるのではないかという説を昔バス釣りの本で読んだのですが、あながち間違っていない気がします。
温度覚
変温動物である魚類は温度変化に敏感で0点何度の差を感じ、生息域の中でもその種が好む温度を求めて移動しながら生きています。また飢餓状態や溶存酸素量の少ない状態では、代謝を低く保つために温度の低い場所に移動する魚種もいて、温度は魚にとってまさに死活問題なのです。
長年魚がどこで温度を感じているかということは謎であったのですが、現在では魚にも温度感受性TRPチャネルという温度受容体が発見されています。これはヒトの場合は皮膚に多く存在するのですが、魚類の場合は主に鰓に存在します、鰓は浸透圧の変化や温度の変化に直接さらされるためではないかと考えられています。直感的にも理にかなっていますね。
魚は痛みを感じるか
これは昔から大激論が交わされていて、今も決着がついていません。現在分かっていることは、魚にも痛覚の受容体があるということです。それでは、魚も痛みを感じるということで決着ではないかと思うかもしれませんが、その刺激が脳に伝わったときに痛みとして感じるのかどうかは分からないという部分でまだ決着していないのです。
痛みを感じない派の理屈としては、人の痛みは大脳皮質にある部分で感じるのだが魚の脳は単純でその部分がないので痛みを感じないというのが主な意見ですが現在はこの意見は否定されることが多いです。
現在では、何をもって魚がヒトと同じような痛みを感じているのかという議論に変わってきています。痛みの受容体もあり様々な実験で不快や苦痛のようなものを示す行動が確認されているが、人間が持っている強い痛みを感じる神経を魚は持っていないので、一瞬ちくっとする程度の痛みしか感じていないはずでそれをヒトで言うところの「痛み」といえるのかというような議論になってきているのです。しかし、魚は言葉を話せないので推測の域を出ず、答えが出ることはこの先ないでしょう。
側線感覚
魚はものに触れずに障害物を回避したり、そのままの場所にとどまったり、他の魚にぶつからずに群れで行動したりできます。これらは側線のおかげです。
魚の側面に頭の付け根からしっぽまで線のようなものが走っていますがあれが側線です。側線上には普通の鱗とは少し形の違う側線鱗が線状に並んでいて、その一枚一枚の中に空いているトンネルのような穴がつながり体側面を通る一本の長いトンネルのようなものができています、それを側線管といいます。また側線に沿って点状に見えるものは穴で、側線管に接続されています。
側線管の中と鰭や表皮上には水粒子の運動や流れを捉える感丘があります。これで近くにいる魚の動きや、障害物や、流れの向きや変化などを捉えるのです。側線管の中にあるものは管器感丘で、表皮や鰭に存在するものは表在感丘です。表在感丘のほうは水の流れをとらえる物ではないかと言われていますがまだまだ謎が多いようです。また、頭部にも側線があります。
側線で何を捉えているか
側線では聴覚のところでも説明した「水粒子の運動」を検知します。この水粒子の運動は分かりやすく言えば水自体の振動のようなもので、数センチから数十センチくらいしか届きません。ですので、遠くで動くルアーの振動を捉えることはできないのです。よくルアーの波動(何を意味しているのかよく分からないが)が魚を引き寄せるというようなことが言われますが、それは誤りです。
側線で音は聞けない
音とは何でしょうか、我々が聞いている音は音圧です。遠くで誰かが手をたたくと秒速340メートルというものすごいスピードで耳に届くあれです、数メートル先で誰かがルアーをからからと鳴らすと音が聞こえるというのもそうです。我々はこの音圧を聞いているのです。しかし側線に音圧を捉える機能は備わっていません。側線は水粒子の運動を感じる器官なのです。
当然音圧であるラトル音を側線で感じることはできません。また、側線でラトルの音を聞くというような記事を目にすることがありますが、音圧を聞くのは耳の役割です、なので、耳で匂いをかぐと言っているようなものでそれは不可能です。
側線で音を感じるというという表現は間違いではない
さっき側線で音は感じないと言ったではないかと思うかもしれません、ここら辺が最もややこしいところなのです。上で説明したのは音圧であり、側線で音圧を感じることができないのは確かです。しかし実は「水粒子の運動」も音なのです。音は音圧+粒子運動と定義されています。粒子運動は空気や水そのものの揺れです、粒子運動は空気中ではすぐになくなり検知することはできません、その揺れによって圧力の疎密(中学の理科で習います)が起こりそれが音波として遠くまで伝わります。
陸上生物にとってはイメージすることは不可能ですが、水中では粒子運動が数センチ伝わることができるので魚はこれを耳で聞き側線で感じているのです。
ですので側線で音を感じているというのは間違いではありません、ただし側線で音を「聞いている」というのは間違いです。
波動で魚を寄せることはできない
波動は釣り具メーカーが作った言葉なので何を指しているのかはよく分からないのですが、ここでは振動や水粒子の運動と思って話を進めてみます。もうお分かりだと思いますが、水粒子の運動は数センチから数十センチくらいしか伝わりませんので、波動で魚を寄せるというのは原理的にありえません。
