リールの巻き上げ力とは何か?自分のリールの巻き上げ力を調べてみよう。
リールの巻き上げ力はどうやったら分かると思いますか。
・ギア比でしょうか?
・スプール径でしょうか
・ボディーの剛性でしょうか?
いずれも関係ありません。ある二つの数値が分かれば、簡単な計算で求められるからです。
しかし、計算結果が同じだとしても、実際の巻き上げ力は、ステラと二千円のリールとでは当然違います。
それは機械的損失があるからです、一見謎めいてて、複雑そうで、難しそうですが、そんなことはなく、簡単な引き算とかで分かります。そこら辺の話もあわせてします。
リールの巻き上げ力を計算する方法
今回の記事は、リールの巻き上げ力です。難しく考える必要はありませんよ。
そもそも巻き上げ力とは
リールの巻き上げ力ってなんでしょうか?
実は、巻き上げ力の明確な定義というものはありません。
と言っても、それで話が終わるわけではありません。
リールの巻き上げ力と言うと、だいたいの方が下記のようなことを思い浮かべるんじゃないでしょうか?
①ステラとソルティガで3キロのおもりを持ち上げる。どちらが小さな力でハンドルを巻けるか?
➁アンタレスとダイワのZ2020。5キロの 力でハンドルを回すと、何キロのおもりが持ち上がるか?
こういったところでしょう。
①も➁も同じことなんですが、一応書いときました。
本記事では、上の二つの疑問をベースにして、お話させていただきます。
これらは、カタログやスペック表を見れば分かるんです。
巻き上げ力は何できまるのか
リールの巻き上げ力は
「ハンドル長」と「最大巻上長」で決まります。
決して、ギア比ではありません。
これは「仕事の原理」で説明できます。中学で習う物理学です。
「仕事の原理」とは簡単に言えば、20キロの物を持ち上げるのに、テコを使ったら10キロの力で済んだとします。
このとき重さで言えば10キロ楽になっていますが、その代わりに、テコを押すときの長さは、2倍になっているということです。
難しく言えば
【物体が力の向きに移動した距離】✖【力の大きさ】を仕事と言います。
道具を使おうが、機会を使おうが、リールを使おうが、「仕事」は何も使わない場合と変わりません。
これが仕事の原理です。
あと、単位も分かりやすくするために[J]とか[N・m]とかは使いません、ご了承ください。
⇩仕事の原理⇩
リールの場合はこうです
ロープを下に50センチ引くと、ぐるんぐるんぐるんと一気におもりが133.3センチも持ち上がります。
しかしその分めっちゃ重くなるので、10キロのおもりを持ち上げるのに、26キロの力が必要です。
巻き上げ力を計算してみる。
【ステラvsソルティガ】、【アンタレスvsZ2020】
実際に計算してみます。
まずは、摩擦などの機械的損失は考えないことにします。
おさらいです⇩
①ステラとソルティガで3キロのおもりを持ち上げる。どちらが小さな力でハンドルを巻けるか?
➁アンタレスとダイワのZ2020。5キロの 力でハンドルを回すと、何キロのおもりが持ち上がるか?
ということでしたね。
①ステラとソルティガで3キロのおもりを持ち上げる。どちらが小さな力でハンドルを巻けるか?
ギア比も、ドライブギアの大きさも、スプール径も、ローターも、へったくれもありませんので、計算してみます。
ドラグ力は考慮しないものとします。
手が器用で、力の方向に理想的にハンドルを回せるものとします。
あと、単位も[J]とか[N・m]とかは使いません、ご了承ください。
✔ステラSW14000XG
ハンドル長:80mm
最大巻上長:134cm
おもり3㎏
ハンドル一周は16cm×3.14=50.24cm
おもりを動かすときの仕事は134×3=402
従って、ハンドルに加える力は402÷50.2≒8
答え: ステラ14000XGは、3㎏のおもりを持ち上げるのに約8㎏の力がいる
✔ソルティガ5000H
ハンドル長: 75mm
最大巻上長:121cm
おもり3㎏
ハンドル一周は15cm×3.14=47.1cm
おもりを動かすときの仕事は 121×3=363
従って、ハンドルに加える力は 363÷47.1≒7.7
答え: ソルティガ5000Hは、3㎏のおもりを持ち上げるのに約7.7㎏の力がいる
【結論】ソルティガ5000Hの方が巻き上げ力がある
同じ重さのおもりを持ち上げるのなら、ステラ14000XGよりも、ソルティガ5000Hの方が、軽い力で持ち上げられる。ただし計算上はです。⇐重要
➁アンタレスとダイワZ2020。5キロの力でハンドルを回すと、何キロのおもりが持ち上がるか?
✔アンタレスDCMD(ギア比7.4)
ハンドル長:42mm
最大巻上長:86cm
ハンドルを回す力:5㎏
ハンドル一周は8.4cm×3.14=26.376cm
ハンドルを回すときの仕事は26.376×5=131.88
したがって、リールが持ち上げられるおもりの重さは131.88÷86=1.53㎏
答え: ハンドルを5㎏の力で回すと、1.53㎏のおもりが持ち上がる。
✔ダイワDR-Z2020XHLTD(ギア比8.4、ダイワとデプスがコラボした大物用のベイトリールです)
ハンドル長:50mm
最大巻上長:100cm
ハンドルを回す力:5㎏
ハンドル一周は10cm×3.14=31.4cm
ハンドルを回すときの仕事は31.4×5=157
したがって、 リールが持ち上げられるおもりの重さは157÷100=1.57㎏
答え:ハンドルを5㎏の力で回すと、1.57㎏のおもりが持ち上がる。
【結論】 DR-Z2020XHLTDの方が巻き上げ力がある
同じ力でハンドルを回した場合、アンタレスDCMDとDR-Z2020XHLTDでは、 DR-Z2020XHLTD のほうが重いおもりを持ち上げられる。 ただし計算上はです。⇐重要
ちなみに、 DR-Z2020XHLTDの方がハイギア―なのに、アンタレスよりも巻き上げ力があるということになります。あたりまえですね。
しかし、本気でハイギア―のほうが速く巻けると言っているブロガーの方がいますが、少々お馬鹿さんということになってしまいます。
最低限「おなじ機種であれば」というふうに、断りを入れてください。
初心者の方が混乱しますよ。
まあ、本人も分っていないんでしょうが。
リールの性能と「機械効率」
ここまでは計算上の話でした。
ここからは、実際に摩擦やボディーのたわみなどから生まれる、いわゆるパワーロスも考慮にいれて、巻き上げ力を考察していきます。
機械効率とは
計算上では、ステラ14000XGよりもソルティガ5000Hのほうが若干パワーがあるという結果が出ましたが、現実には摩擦やボディーのたわみなどでパワーロスが生じます。ですので、実際におもりをぶら下げて実験する必要があります。
実験の結果、ハンドルに入力した「仕事」のうちの何パーセントの「仕事」が実際に出力されたでしょうか?
これを「機械効率」と言います。
この機械効率の違いが、ステラと2000円のリールの違いです。
また、頑丈でなければ機械効率も悪くなりますので、機械効率がよければ耐久性も高いということが言えるでしょう。
では、ここでもステラ14000XGを例に考えてみましょう。
【例】 ステラ14000XG の機械効率
ステラ14000XGは、ハンドルを約8Kgの力で回せば、3㎏のおもりが持ち上がる
ということでした。
さて、例えば下のような結果になったとします⇩(非常に申し訳ございませんが、2020年⁈に新しい番手のnewステラが出るのを待って実験したいと思います。)
「計算上は3㎏のおもりが持ち上がるはずだったのに、2㎏のおもりしか持ち上がらねえぞ。」
と、なったとします。
このときの機械効率はこうなります。
✔まず、ハンドルからの入力は、8㎏×50.2cm=401.6
✔実際に出力されたのは、2㎏のおもりが134cm持ち上がったという事なので
2㎏×134cm=268
ということは⇩
「おっ、401.6という仕事を入力したのに、出力されたのは268だけだぞ」
ということで
答え:ステラ14000XGの機械効率は66.7(%)
注:実際に実験したものではありません、2㎏という数字は、計算しやすいように私が与えた数字です。
機械効率。結論
機械効率は、機械の性能を表す明確な指標となります。
リールにとっても例外ではないでしょう。
例えばの話ですが、もしソルティガのほうがステラよりも少し重いおもりを持ち上げられるとします。
しかし、もしステラのほうが機械効率が良いとすれば、その場合私なら確実にステラを買いますね。
まとめ
今回は巻き上げ力の話をしました、結局巻き上げ力は次の3つで決まるということです。
- ①ハンドルの長さ
- ➁最大巻上長
- ③機械効率
すなわち、これらを理解して実験してみれば、リールの巻き上げの性能というものは明確に比較できるということが分かるということです。
シルキーな巻き心地がどうのこうのといった、あいまいどころか、もはや思い込みと言えるほどの感覚が入り込む余地などないのです。
今回は、お役に立てる記事が書けたと、われながら自負しています。
とはいうものの、こんな長たらしい記事を最後まで読む人っているんでしょうかね?
ここまで読んで頂いた、強者のあなたに心から感謝します。
ありがとうございました。