ダイワザイオンとザイオンVとDS5とDS4の違い
ZAIONとはダイワ独自の熱可塑性炭素繊維強化樹脂のことで、略してCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)と呼ばれるものです。
炭素繊維を多く含有しているほど強度に優れ、炭素含有量はダイワが1位です。シマノは負けています。
ザイオン
ザイオンの素材
ザイオンとはCFRTP(熱可塑性炭素繊維強化樹脂)と言われる素材です。
CFRTPはFRP(強化プラスチック)の一種です。比較的新しい技術で現在も発展しています。
CFRTPと聞くとなにやら意味のないローマ字の羅列のようですが、実はとても分かりやすいです。
C | カーボン |
F | ファイバー(繊維) |
R | レインフォースド(強化された) |
T | サーモ(熱) |
P | プラスチック(樹脂) |
実にシンプルです。
まずFRPという言葉は聞いたことがあると思います。これは船のボディーで有名な、ガラス繊維を入れて強化したプラスチックのことですね。また、プラスチックは樹脂といわれることが多いです。
この母材となる樹脂をマトリックスといいます。
樹脂に何の繊維を入れるかによって「FRP」にもいろいろあるのですが、通常単に「FRP」といえばガラス繊維が入った強化プラスチックを指します。そうでない業界はわざわざGFRPといいます。
次に頭文字の「C」ですがこれはカーボンで、つまり「CFRP」とはガラス繊維ではなくカーボン繊維で強化されたプラスチックということになります。ここまでは分かりやすいと思います。
では、「T」はどこに行ったんだよということですが、「CFRP」に「T」が付くと普通のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ではなく「熱可塑性」という言葉が加わって「CFRTP(熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)」という言葉が完成するんです。
では、ザイオンの素材であるCFRTPとは何かを見ていきましょう。
CFRTP(熱可塑性炭素繊維強化樹脂)とは
ザイオンはCFRTPということですが、一般的なCFRPとの違いを解説します。
✔️まず、CFRP(炭素繊維強化樹脂)の一般的な成形方法です
一般的なCFRP(炭素繊維強化樹脂)は熱硬化性です。また、母材となる樹脂の種類はエポキシです。
CFRPの成型方法は、「炭素繊維に樹脂が含侵されたもの」に熱を加えて硬化させるという方法がもっとも一般的です。ちなみに「炭素繊維に樹脂が含侵されたもの」をプリプレグといいます。
熱硬化性樹脂を硬化させるには我々にはなじみのない感覚かも知れませんが、接着剤のように待っていればそのうち固まるのではく、焼くという作業が必要なんです。
釣り人にとって最もなじみが深いのが釣竿です。プリプレグをマンドレルという棒に巻きつけて焼いて硬化させて、最後にその棒を引き抜くと釣竿ができる。そういう仕組みです。
✔️CFRTP熱可塑性炭素繊維強化樹脂(ザイオンはこれです)
それに対して、CFRTPとは熱可塑性の樹脂に炭素繊維を混ぜて強化されたものです。
熱可塑性樹脂とは熱を加えると溶けて、冷やすと固まる樹脂のことです。一般的にプラスチックと聞くとこちらのイメージのほうが強いのではないでしょうか。
ザイオンの素材は熱可塑性なので普通のありふれたプラスチックのように熱で溶かして金型に流し込んで成形するということができるのです。
これにより、リールと言う複雑で小さな機械を高精度、低コストで大量生産できるようになったのです。
また、熱硬化性CFRPの樹脂はエポキシですが、CFRTPの樹脂の種類は様々ありその種類によって特性が大きく変わります。主にポリプロピレンやさらに高い物性のポリアミド系があり、そのほか様々なものが検討され研究されています。
ダイワが何を使っているかはわからないですが、東レとの関係が深いので東レの表を載せておきます↓
単位 | PA6/CF20% | PA6/CF30% | PPS/CF20% | |
---|---|---|---|---|
ベースレジン | PA6 | PA6 | PPS | |
CF含有量 | wt% | 20 | 30 | 20 |
密度 | kg/m3 | 1220 | 1265 | 1380 |
引張強度 | MPa | 180 | 225 | 170 |
シャルピー衝撃強さ (ノッチ付) | kJ/m2 | 8.5 | 10.0 | 5.6 |
曲げ強度 | MPa | 270 | 331 | 250 |
曲げ弾性率 | GPa | 11.5 | 18.2 | 15.1 |
✔ザイオンはカーボンの短繊維が、高い含有率で入っている。
つまり、熱可塑性樹脂に細かい炭素繊維を含有させる事によって強度の高いプラスチックができるわけです。
ザイオンは炭素繊維の含有量が異常に高いのが特徴です。
ダイワのサイトで一般の物より3倍近いと言っています。↓
一般のカーボン混合樹脂は、カーボン繊維量が多くても10~15%といわれている。これ以上のカーボン繊維量だと成形や加工が上手く出来ないことから、カーボン繊維量の増加は、不可能だといわれていた。それでも、マグネシウムを超える素材を目指してトライ&エラーをくり返し、なんと一般含有量の3倍近いカーボン繊維を配合した素材を開発することが出来たのだ。それが「ザイオン」である
金属を凌駕する樹脂、唯一無二の素材「ザイオン」
ダイワのサイトによると2011年時点でカーボン繊維の配合量はナンバーワンということですが、現在でもそれは変わらないということです。関係者にメールで確認しました。
シマノのCi4+とどっちが上か?
炭素の含有量はダイワの方が上です。当然強度もダイワの方が上です。
シマノがこの話題に対して歯切れが悪いのはおそらくこの事実が影響していると思われます。
それにしてもカーボン関係ではシマノはダイワに勝てないことが多いですね。
ザイオンV
強度
ザイオン>ザイオンV>DS5
ザイオンより炭素繊維の含有率が低く、樹脂の種類も違うものです。
マトリクスの種類、炭素繊維の含有量によって加工のしやすさやコストが変わってきますので総合的にもっとも適したものが採用されるということです。
ザイオンVを採用することによって下位機種にもモノコックボディーが採用することができるようになったのは素晴らしいことです。実売価格は16000~17000円そこらなので入門者や初心者の方は貯金して迷わずこちらのほうを買ったほうがいいと思いますよ。
低価格帯のスピニングリールにおいては、私の中ではダイワかシマノ論争に完全に終止符が打たれました。
DS5
DS5はザイオンより炭素繊維含有量が低いものです。また樹脂の種類もザイオンともザイオンVとも違うものになります。ただ単にそれだけのことです。
DS5はザイオンよりもいいのでは?というロマンはありません。
DS4
DS4は上の二つとは違い、炭素繊維ではなくガラス繊維が配合されたものです。安いクラスのものに採用されています。
ザイオン+モノコックボディはスピニングリールのひとつの答えか。
もはやマグネシウムにできてザイオンにできないことはあるのだろうか?
2020年にザイオンとモノコックボディが採用されたルビアスが発売されました。技術面やコスト面など色々な制約をクリアして発売に踏み切ったのであろうが、つまり初めての試みであり消費者によるフィールドテストを行う段階に入ったということです。
「もはやマグネシウムにできてザイオンにできないことはあるのだろうか?」という問いに答えが出てしまったら、マグネシウムという存在とどう住み分けるのでしょうか、あるいはマグネシウムは必要ないということになるのでしょうか?
現在ルビアスの上にフラッグシップであるイグジストがあり、マグネシウムボディが採用されています。そしてもうすでに軽量化では遜色なく、おそらくコスト面では凌駕している事でしょう。
そして、頑丈さが重要になるジャンルにはマグネシウムではなくアルミが採用されています。
コストが下がり、中級クラスのリールにもザイオンモノコックが採用されるようになることを想像すると、ダイワのスピニングリールの将来が楽しみでしかたがないです。
対してシマノはどうであろうか、このまま「起業イメージ」、「カッコよさ」、「心地」、「フィーリング」といったものに頼り続けるのでしょうか?
また稀代のマーケッターである村田さんも永遠にいるわけでもありません、今幼稚園の子供たちも小学校に上がってやがて釣りを始めるでしょう、果たして新しい人達に、企業イメージや心地なるキーワードが通用するでしょうか?
この「ザイオン+モノコック」はかなり私の琴線に触れてくるのです。
最後に1979年の日本複合材料学会誌の記事に興味深いことが書かれています。
CFRTP成 形品のね じ強 度は,釣 人 の毎度の分解
掃除 に耐 えなけれ ばな らない.ス ペースを とらずに
丈夫 なね じ孔 を どの ように成形 した ら よ い だ ろ う
か.
釣 用 品 と 複 合 材 料
41年後ダイワはモノコックボディによってこの課題を見事に解決しました。
以上です、ありがとうございました。