釣竿の素材と構造
釣竿の素材
釣竿は竹、グラスロッド、カーボンロッドというふうに進化してきました。
現在はカーボンロッドが主流で、グラスロッドはあえてグラス素材の特徴を活かしたい場合の特殊な用途に使用されています。
カーボンロッドの素材と特徴
カーボンロッドは炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた炭素繊維強化プラスチックでできています。
カーボンロッドの最大の特徴は軽くて反発力があるということです。1972年に世界でオリムピックというメーカーが初めて「世紀鮎」という商品名の鮎竿に採用して、それまでの7.2mのグラスロッドが約700gちょっとだったのに対しカーボンロッドでは同じ長さで500g中盤ほどという2割以上の軽量化に成功しました。当時のダイワの生産本部技術部ロッド技術課長の戸澤氏は「カーボンロッドの登場は、グラスロッド以上の革命的な出来事だった」と述べています。現在に至ってはダイワから9mで195gという凄まじいものも登場しています。釣竿の歴史とはまさに軽量化の歴史なのです。
ちなみに私は世界初のカーボンロッドはダイワだと思っていたんですが、意外にそうではなかったみたいですね。しかし、それ以降はダイワが世界のカーボン技術を牽引し続け現在でも釣竿のカーボン技術においては自他ともに認める世界ナンバーワンです。その技術が認められ、医療の会社と大学とダイワが共同で脊椎を固定する世界唯一のカーボン製ねじを開発していたりします。
グラスロッドの素材と特徴
グラスロッドはガラス繊維強化プラスチックでできています。グラスロッドの場合はエポキシ樹脂ではなくフェノール樹脂が使われています。
特徴は非常に重く低反発ということですが、その低反発という特性を活かして一部のルアーロッドなどには今でも採用されています。グラスロッドは1950年代に商品化され、竹竿と違い同じものを大量生産でき、またガラス繊維の含有量や角度を変えることで様々な種類の釣竿を製造できるということで、釣竿を工業製品化することに成功しました。しかし実はスペック的には意外に、反発力も重さも竹竿とそれほど変わらないので、1970年後半にカーボンロッドが普及し始めたことに伴い次第に主役の座を奪われ、現在では特殊な用途にしか使われなくなりました。
カーボン含有率とは
カーボンロッド、グラスロッドと言っても100%カーボンや100%グラスの竿というのはほぼありません。大体カーボンが80%後半~90%後半で残りがグラスというのが一般的です。そこで、カーボン何%以上がカーボンロッドなのかを決める必要がでてきます。これは全国釣竿公正取引協議会が決めています。
グラスロッド
グラス繊維を50%以上使用して製造したもの。
カーボンロッド
カーボン繊維を50%以上使用して製造したもの。
※使用繊維重量(使用繊維を重量割合で表わしたもの)を密度で割り、使用繊維体積に換算し、その使用割合を表わしたもの。
なお、ちょうど50%の場合はどっちなんだよということですが、書いていませんでした。
釣竿の構造
釣竿は複数の角度を持った繊維を組み合わせた炭素繊維強化プラスチックです。
0度方向の繊維が曲がりに対する復元力を担当し、90度方向の繊維がパイプが潰れてしまう力に対する抵抗力を担当している。これが釣竿の構造の本質です。
それではもう少し細かく解説していきます。
釣竿の基本構造
釣竿は簡単に言うと炭素繊維強化プラスチックでできた円錐状のパイプです。プリプレグという硬化していない状態のエポキシ樹脂に炭素繊維が敷き詰められたシート状の物をマンドレルという金属の棒に巻き付けて、それを加熱して硬化させて、最後に棒を引き抜くことによって、円錐状のパイプが出来上がります。
プリプレグと繊維の向き
プリプレグは一方向に引きそろえられた炭素繊維でできています。竿の向き(0度)に繊維が揃っているということは容易に想像できますが、実はそれだけだと竿が折れやすくなってしまいます。曲がった竿を復元させる力は0度の炭素繊維によって強化されていますが、パイプがつぶれてしまう力に抵抗する力は全てエポキシ樹脂に依存してしまっているからです。
そこでさらに繊維の向きが90度になる層を追加して竿を製造します。これでパイプが潰れる力に抵抗する力を与えるのです。
現在ではそこからさらに進化し0度方向の繊維を内層と外層から45度の繊維で挟み込んだりと様々なものがでてきています。
チューブラーとソリッド
チューブラー
中身が詰まっておらず中空になっているものです。釣竿のほとんどはチューブラー構造です。
ソリッド
中身が詰まっている棒のような構造をソリッドと言います。主に竿先の部分だけに使用されますが、一部の特殊な竿には竿全体がソリッドになっている物もあります。
継ぎの種類と特徴
並継ぎ

入門竿から高級竿まで幅広く使われるもっとも一般的な継ぎ方です。テーパーのついている竿体に対して継ぎ部は入れる部分も入れられる部分もほぼ真っすぐでなくてはいけないので、抜けにくい構造になっています。デメリットは継ぎ数の多いコンパクトロッドになるとバット部分がとても太くなってしまうので、ベリーから先しか仕事をしないといういびつなアクションになってしまいます。ダイワシマノともに中級機種までは非常にいびつなアクションのものしかありません。実用上問題ありませんが、曲がりにこだわる人は高級機種しか選択肢がなくなってしまいます。
逆並継ぎ(オーバーフェルール)

最近はあまり見なくなっていますが、一昔前は中級機種までにごく一般的に使われていました。メリットは竿のテーパーをそのまま使用しますので低コストで、自然なつながりの竿を作れることです。継ぎ部の入れられる方の部分が少し太くなっていて20cmぐらい進むと元の太さに戻るような仕組みになっています。ですので、バット部分が太くならず低価格帯のものでもワンピースに近いアクションを出すことができます。デメリットは竿のテーパーをそのまま活かすので、継ぎ部が緩みやすいことで、ライトショアジギング以上の重い物を扱う釣りには不向きです。これは私の経験上も実感しています。ですのでライトゲームの中級クラスまでのロッドには理想的な継ぎということになります。
印籠継ぎ(インロー継ぎ)


主に高級ロッドに使われる方式で、緩みにくくワンピースのようなスムーズなアクションが出しやすい理想的な継ぎです。デメリットはコストがかかることで、各社ここの部分にかなりの情熱をそそいでいます。釣竿の製造は完全自動化は不可能で、人の手で作られる部分が非常に多い工業製品です。当然印籠継ぎの棒の部分も一つ一つ人が接着剤を塗って差し込んでいるのです。
アクションとは
アクションといえばテーパーも硬さも含めて全体的にどのような竿なのかという大雑把な意味で使われる場合もありますが、テーパーと硬さの話をしたい場合は「テーパーは?硬さは?」というふうに言う場合が多いと思います。
硬さ
アクションとはルアー竿においての竿の硬さを表します。これも厳密に数値で決まっているのではなく、各々のメーカーや人によって感覚が違います。例えばダイワとシマノでは表記は同じなのにダイワのほうが硬かったりするのは当然です。
記号 | 読み方 | |
---|---|---|
XH | エクストラヘビー | |
H | ヘビー | |
MH | ミディアムヘビー | ↑硬い |
M | ミディアム | 中 |
ML | ミディアムライト | ↓柔らかい |
L | ライト | |
UL | ウルトラライト | |
XUL | エキストラライト |
テーパーとは
異なる種類の竿をそれぞれ同じ力で曲げても先の方だけが急激に曲がったり竿全体が弓なりに曲がったりする竿があります。その曲がり方から見た竿の性質を調子と言います。厳密に数値で決まっているわけではなく、それぞれのメーカーの大体の感覚で決まっています。
ファーストテーパー

低負荷で竿に力を加えたときに先の方だけが曲がります。ルアー竿の場合、硬くて先調子の竿は投げにくいので初心者には向きません
レギュラーテーパー(本調子)

低負荷で竿に力を加えたときに先調子よりも根元よりで曲がるものです。ルアー竿の場合大体どんな釣りをするにしても使いやすいので初心者はレギュラーテーパーが向いています。
また、本調子という日本語もあるのですが、フナ釣りの世界以外では全く使わない言葉ですのでレギュラーテーパーと言いましょう
スローテーパー

低負荷の時点から竿全体が曲がるものです。特に魚がかかったときに竿が弓なりに曲がるので楽しいです。ルアー竿の場合竿を曲げやすいので初心者がキャストを覚えるのにはもってこいですが、場合によってはぐにゃぐにゃしすぎて使いにくいので、初心者には不向きです。